高濱先生が伝える「妻との受け答えは3つでよい!?」
現場で多くの親子、とくに母親を見てきた高濱先生ならではの実践的子育てノウハウを1冊に。
夫婦関係
受け答えは3つでよい!?
妻とのコミュニケーションを積極的に取ろうと言っても、自分にとって興味のない話を聞き続けることほど苦痛なことはない、というのが本音ではないでしょうか。
こちらがよかれと思って言った一言が気に障って逆にけんかになるという可能性もあります。
そんな父親のために、相槌のコツをお伝えします。
父親向けの講演会をしていて思うのですが、男性という生き物は総じてリアクションに乏しいんですね。
理由のひとつには、男性は「頭で聞く」ことがあると思います。
言いかえれば「論理を解する」ということ。
反面、女性は会話の中で「感情を受け取る」傾向にあります。
それが、リアクションの豊かさにつながっているのです。
ですから、父親たちが妻の話を聞くときに陥りがちなのが、「結局、それってこういうことでしょ」と結論を言ってしまうこと。
感情を共有して共感してほしいのに「だったらこうすればよかったじゃん」と解決策を言われると、「この人は何もわかってくれない」となり、「信頼できない人」になってしまうのです。
「妻のすすめで来ました」と、講演会に参加してくれた小学3年生の息子を持つ、ある父親。
妻の話を聞くことの大切さを話すと、こんな悩みを打ち明けてくれました。
「わたしは妻の話は聞いているほうだと思います。ですが、わたしのよくないところは妻にちゃんと指摘ができていないことだと思うのです。いつもめいっぱいがんばっている妻に意見を言っても『普段、家にいないからそんなことが言えるのよ!』と言われてしまい、返す言葉がなくなってしまうのです。でも、誰かが言わないといけないこともあると思うんですよね」
この父親は、とても一生懸命な方です。
妻のすすめとはいえ、講演会に積極的に参加し、家族のためになることを学ぼうとする姿勢に好感が持てます。
ですが、ひとつ大きな勘違いをしています。
この父親のよくないところは、「指摘できていないこと」ではなく、「妻の話を黙って聞いて、受け止めていないこと」なのです。
「聞いているほう」と思っているのは自分だけ。
妻はおそらく「この人はわたしの話を聞いてくれない」と思っているから、講演会の参加をすすめたのだと思います。
ですから、父親向けの講演会では、まず始めに「うなずき」の練習をします。
その練習をすることで、いかにこれまで自分がうなずいていなかったか、妻の話を本当の意味では聞いていなかったかが、よくわかります。
うなずくことの大切さを伝えたあとで、よく父親たちから質問されることがあります。
「黙ってうなずいていたら『何か言うことないの?』と妻に言われるのですが、そう言われたら何て言えばいいんですか?」と。
そういうときは、まず「なるほどね」。
意見は求められていません。あくまでも妻が欲しいのは「共感」です。
「なるほどね」には、「あなたの言っていることに納得していますよ」という気持ちと、「あなたの言っていることは正しいと思いますよ」というニュアンスが含まれます。
「黙って聞く」の次は、「問いかけて話を聞き出す」です。
ただうなずいているときは、「あなたの言うことに納得していますよ」という意思表示でした。
「問いかけて話を聞き出す」のは、「あなたのこと、考えていることがもっと知りたい」というメッセージ。
妻の話を聞きながら、時折「問いかけ」をはさみます。
怒濤のように流れ出てくる妻の言葉の合間をぬって発言するのには高度な技を求められます。
上手にやらないと「うるさいな」と言われてしまいます。
「それの何がイヤだったの?」
「それってどういうこと?」
「それで、何て言ったの?」
と、話の進行を促すような問いかけをするということが大事です。
そのときにも絶対に言ってはいけないのは、「それって、結局こういうことでしょ?」というまとめの言葉。
話を終わらせようとするのではなく、話を進めようとするために問いかけをするのです。
「もっと聞かせて」「もっと知りたい」という気持ちが伝わることが大事なのですから。
ですから、話を終わらせようとして逃げてはいけません。
逃げたいと思う気持ちをぐっとこらえて、むしろこちらから追いかけるくらい「もっと聞かせて」「もっと知りたい」と、妻の話を押していくのです。
「勝手にしろ」や「うるさいな」は問題外ですが、妻の話を聞くにあたってのNGワードには、他に「わかった、わかった」「聞いてるよ」があります。
何にしても、2回繰り返す言葉はいい加減に聞こえます。
「はいはい」しかり、「やるよ、やる」とか「わかった、わかった」は2回言うことで「これでおしまい」という幕引きに聞こえるのです。
「ごめんごめん」も誠意がありません。
実際、言うほうは「これ以上言うなよ」と思っているのではないでしょうか。
また、「聞いてるよ」は、「聞いてるの?」と言われたときの答えです。
そもそも、聞いているように見えないから聞かれているわけです。
「耳に入っている」というのは、妻からしたら「聞いている」うちに入りません。
「以前から妻には「あなたは人の話を聞かない』と言われていて、自分ではそうでもないと思っていたんですが、実際は妻の言う通りなのかもしれません。そう気づいていても、なかなか難しいですね」(小学1年生男子の父親)
自分が女性の話を聞けない人間だなんて思ったこともありませんでした。
ですが、妻に「話を聞いていない」と言われ、若い頃は生徒の母親たちから「先生、ちゃんと聞いてますか?」と言われ、「話を聞く」とはどういうことだろうと考え続けてきました。
その結果わかったことは、「共感の意を示すために、うなずき、ことの大切さでした。
幼稚園年長の娘さんを持つ父親が、半ば冗談まじりにこう言っていました。
「若いお姉ちゃんの話なら何でも聞きたいけれど、妻の話は「ふんふん」と言いながらも聞いていないことが多いですね」
妻にも「若いお姉ちゃん」だった時代はあるはずです。
そのときを思い出して、うなずきと問いかけの練習あるのみです。
『父親ができる最高の子育て』高濱 正伸 (著)・ポプラ社刊(p100~p106)より抜粋
学習教室「花まる学習会」代表
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