高濱先生が伝える「叱るとき、誉めるとき」
現場で多くの親子、とくに母親を見てきた高濱先生ならではの実践的子育てノウハウを1冊に。
しつけ/育児
叱るときは子どもの言い分を聞かない、誉めるときは哲学に沿って
父親向けの講演会でよくあがる質問に、しつけや誉め方、叱り方についてのことがありますので、ここで触れておきましょう。
幼児期は、特にしつけが大事。
しつけは決めたことを守らせることが必要です。
しつけというのは真実かどうかではなく、社会的な集団の決まりごとです。
集団の中で生きていくために、朝は早く起きなくてはならない、遅刻をしてはいけない、挨拶をしなくてはならない、そういう決まりごとなのです。
子どもが、「だって、夜仕事して朝寝てる人だっているんだから、朝早く起きなきゃいけないっていうのはおかしい」と言ってきたら、そのときは毅然としてはねのけます。
「ウチの家族は、朝は早く起きるという決まりなんだ。だから早く起きること、それだけ!」
誉め方、叱り方については、子育ての永遠のテーマであり、本質のような気もします。
わたしの考えとしては、大前提として、親の哲学がぶれないことが大事。
誉めるのもるのもどちらも同じくらい必要ですが、どんなことで叱るのか、どんなことで誉めるのかがぶれないように方針を決めなければなりません。
仕事でストレスがたまって機嫌の悪いときに叱る、お酒を飲んで機嫌のいいときに誉める、というのでは子どもに響きません。
それどころか「お父さんは機嫌によってコロコロ変わる」と思われて、信頼されなくなります。
わたしの考える叱り方は、「厳しく短く後を引かず」。
なんでも優しく言えばいいというものではありません。
親として、子どもに厳しく言えないことも罪です。
母親のアンケートの中には、自分がいくら大声で「朝起きなさい」「早くお風呂に入りなさい」と言っても聞かないのを、父親が一声「早く入れよ」と言うだけで動く子どもたちを見て、父親の大きさを感じるという意見がありました。
加えて、叱り方で言えば、子どもの言い分を聞かないということもポイントです。
言い分を聞いて、それに則って叱ってはいけないということです。
弟が「お兄ちゃんが叩いた」と言ってきたとします。
ですが、もしかしたらウソかもしれません。
多くの場合子どもの言い分は、自分を守るために言うことだからです。
ですから、そこでお兄ちゃんを呼び出して、「お前、叩いたのか」と聞いてはダメなのです。
弟の言い分を信じてお兄ちゃんを問い詰めても、お兄ちゃんもウソをつくかもしれないし、もし弟がウソをついていたらお兄ちゃんは傷つきます。
お兄ちゃんが叩くところを実際に見ていたのなら注意してもいいのですが、そうでない場合は、「叩いたかどうかはお父さんは見てないから、お兄ちゃんと2人で解決しなさい。お父さんは2人とも好きだから、どっちが悪いかはわからないよ」と言うのです。
誉め方としては、親の哲学が反映される誉め方がいいと思います。
「子どもにどんな人間になってほしいのか」、その哲学が形になったところで誉めるのがポイントです。
もし、思いやりのある子になってほしいと思うなら、友だちを助けてあげたとか、道を歩いていて人に親切にしたとか、そういうときに思いっきり誉めてあげるといいでしょう。
「本当に優しい子だな」
「そういうふうに、人を助けてあげる気持ちって大事だよ」
と、何がどうしてよかったかをきちんと伝えながら誉めてください。
そうすると子どもは、「こういうことが大事なんだ」と胸に刻み、そういう生き方をするようになります。
誉め方、叱り方の軸の持ち方
わたしの、教育者としての「軸」は、「もめごとは肥やし」。
子ども同士のトラブルは大歓迎。
トラブルよ、あれ!と言いたいくらい。
トラブルは、互いに傷つくけれど、解決するごとに少しずつ強くなるのです。
それがないと、大人になってがくんと折れてしまいます。
傷ついた人、苦労した人が強い、というのは真実です。
いろんなことを経験したからこそ、「こんなことくらいなんとかなる」と思って前進することができるのです。
「花まる」ではサマースクールなどの野外学習がありますが、ちょっとしたケンカは教師たちも止めません。
あきらかないじめは間に入りますが、そうでなければ子どもたちに任せます。
もちろん遠くから見てはいますが。
子ども同士なので、トラブルがあってちょうどいいくらいです。
誉める場合によくやってしまうのが、勝負ごとの結果を見て誉めてしまうことです。
確かに何かに勝ったら嬉しいですし、誉めてあげたくもなります。
ですが、あまり勝ったことばかりにこだわると、負けたときに子ども自身がつらくなります。
勝ったことを喜びながらも、がんばったことにフォーカスしてあげるといいと思います。
誉めるのは、その子が成長するうえで伸ばしてあげたいところ。
大人になって武器になるような長所がいいでしょう。
誉めるポイントにも、正解不正解はありません。
夫婦で話し合って実践していくことが大切です。
もし、家庭の方針で子どもには外見を磨いてほしいと思うなら、「かわいいね」「カッコいいね」「ステキだね」と積極的に誉めてあげるというやり方だってあり得るでしょう。
・父親は母子の適切な関係を保つ要。
・子どもの言語感覚や論理的思考は日常生活の中でこそ伸びる。
・父親は家庭の方針を決める舵取り役。
『父親ができる最高の子育て』高濱 正伸 (著)・ポプラ社刊(p66~p71)より抜粋
学習教室「花まる学習会」代表
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