高濱先生が伝える「父親は母親のサポーターに」
現場で多くの親子、とくに母親を見てきた高濱先生ならではの実践的子育てノウハウを1冊に。
夫婦関係
父親は母親のよきサポーターになりなさい
子どもが成功する秘訣が家庭環境のよさ、母子関係にあるとすれば、父親はどうしたらよいのか。
仕事だけではなく、家事・育児を積極的にこなすイクメンになることなのでしょうか。
わたしは必ずしもイクメンになる必要はないと思っています。
父親向けの講演会をしたり、父親向けの本を執筆したりしていることで、わたしも「イクメン賛成派・推進派」のように思われることがありますが、イクメンは、できる人・やりたい人がやればいい。
その程度にしか考えていません。
それに、わたしの持論は、家庭での父親の第一義的な仕事はあくまで「妻を笑顔にすること」。
母親が安心して育児に取り組めるように支えてあげることを考えるべきだと思っています。
家事・育児参加を意識しすぎると、それが得意ではない父親たちにとっては「自分はまだまだだ・・・・・・」と自責の念が生まれてしまい、また、父親が母親と対等になろうとする視点が生まれてしまうことは、実は母親にとっても心地のよいものではありません。
ここでは家庭での父親の役割を考えていきますが、必ずしも家事・育児を分担するということだけが妻の支えとなり、母親を笑顔にさせるということではないのです。
もちろん、時間的・物理的に母親の負担が大きいときには、支えてあげる必要はあるのですが。
多くの父親は、家事・育児をやりたいという気持ちがあっても余裕はないというのが現実ではないでしょうか。
2012年の中央調査社の調査結果では、男性の育児参加の割合が低い理由の71.5%が「仕事に追われて、育児をする時間がとれない」ということでした。
この頃と比べて、働き方に対する企業の意識は変わってきているでしょうが、まだ万全ではありません。父親のイクメン化には限界があります。
そんなときは、精神論に聞こえてしまうかもしれませんが、「妻のことを思っている」ということを伝えるだけでも効果的なのです。
僭越ながら、先日行ったわたしの「できる範囲の小さなこと」をご紹介させてください。
あるデパートで仕事があった帰り、ちょっと小腹がすいたので地下1階に行って何品かを買いました。レジに並んでいたら少し離れたところにあんみつが見えました。
ああ妻が好きだったなと思い出し、いったん列を離れて買いました。
夜中に帰宅して、「ちょうどデパートで見つけたから」と差し出すと、とても嬉しそうでした。
そして、風呂から上がると、食卓に鯛焼きが置いてあります。
「ちょうど、好きだって言っていた鯛焼き屋さんの前を通ったから、買っておいた」のだそうです。
あんこの愛にあんこ返し。
平凡だけれど、こんな小さな思いやりが妻の心の安定、ひいては夫の幸せにつながっているのではないでしょうか。
「ありがとう」
わたしも不思議に思うのですが、女性は一年に一度高額なバッグを買ってもらうよりも、毎週お菓子や雑貨をお土産に買って帰ることのほうを喜ぶように感じます。
母親を対象に行った「花まる」のアンケートでは、「自分の誕生日を覚えていないといらいらしますか」という質問に7割近くが「いいえ」と答える一方で、「特別なタイミングでなくても夫がお土産やプレゼントを買って帰ってくると嬉しい」という質問に9割が「はい」と回答しました。
ただ、父親がイクメン化する気持ちもわからないではありません。
父親向けの講演会では、最後に感想を書いていただくアンケートがあります。
設問のひとつに、「ご結婚されている方へ質問です。奥さまにかけられて喜びを感じる言葉はどのようなものですか?」というのがあります。
回答された方の9割が、同じ言葉をあげています。
父親たちの思いはとてもシンプルなんです。
「ありがとう」と言われただけで、心から嬉しくなるのです。
なんだか健気な感じすらしてきます。
中には、喜びを感じる言葉のあとにカッコで(すべて笑顔)と書いた方もいました。
「自分もがんばっているつもりで、それに対するねぎらいの言葉を求める気持ちがあるために、妻に対してこちらからねぎらいの言葉をかける行動に欠けている」(小学1年生男子の父親)というコメントも書いてありました。
妻の笑顔を見たいけれど、その前に自分から妻を笑顔にしてあげなければと思ったのかもしれません。
妻の笑顔を見たいという願いは切実なんですね。
『父親ができる最高の子育て』高濱 正伸 (著)・ポプラ社刊(p33~p37)より抜粋
学習教室「花まる学習会」代表
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