専門家が伝える「子どもへの否定」が危ない理由!「ネガティブなセルフイメージをつくる」
否定しないコミュニケーションの専門家であり、国内外の企業でエグゼクティブコーチングを行うプロが教える「否定しないで人を育てる」コミュニケーションの習慣を初公開。
しつけ/育児
ネガティブなセルフイメージをつくる
「子どもへの否定」が危ない理由の3つ目は、否定の言葉が子どものトラウマになってしまう可能性があるからです。
会社における上司と部下や、夫婦間でも同じですが、相手を否定する言葉は、言ったほうはすぐに忘れても、言われたほうはずっと覚えているもの。
大人同士なら、「ずっと根に持つ」くらいで済む話でも、子どもの場合は、親のひと言が原因で、それがトラウマになってしまう危険性があります。
「トラウマなんて大げさな・・・・・・」と思う方もいるかもしれません。
では、トラウマではなく、それがその人の信念、セルフイメージとして固まってしまう可能性があるとしたらどうでしょうか。
セルフイメージとは、「私は○○な人間である」という認識のこと。
このセルフイメージが怖いのは、自分に対する自己認識であるにもかかわらず、他人から植えつけられる場合があることです。
ひとつ例を挙げましょう。
自分に自信が持てず、積極的に行動できないことに悩んでいたある方。
その原因を探っていったら、子どもの頃に親から言われた次のひと言が原因だったとわかりました。
「おまえは何をやってもできないんだから、目立たないようにしていなさい」
まさに、親からの否定の言葉がトラウマになってしまった例です。
そして、こういった否定は、数ある否定の中でもとても危険なものです。
その後の行動や生き方にまで強い影響を与える場合があるからです。
「自分は何をやってもできないんだ」
「目立ったらろくなことがない」
といった片寄った思い込みを持ったり、自分を勝手にネガティブに定義して、目立たないように生きようとしたり、やりたいと思うことに蓋をしたりするようになったりします。
「自分は、いくらなんでも、そんな子どもの全人格を否定するようなひどい言葉は言わないから大丈夫」と思いましたか。
では、たとえば、学芸会のお遊戯が覚えられないと悩む子どもに、「あなたは(お遊戯は)うまくできないんだから、(ほかの子たちの迷惑にならないように、舞台では)あんまり目立たないようにしていなさい」なんて伝えるようなこと、日常生活の中では意外と多くあったりします。
否定の言葉には、それを発するシチュエーションがあります。
親からすれば状況的に必要と感じて伝えたアドバイスのような言葉でも、子どもの頭には、細かなシチュエーションは忘れ去られ、「あなたはうまくできないんだから目立たないようにしていなさい」という「否定の言葉」に変換されることがあります。
これを「極端な抽象化」と呼んでいますが、子どもにはそれが起きやすく、時に心に深く刻まれ、大人になっても残るトラウマになってしまうことがあります。
だから、子どもへの否定は怖いのです。
これは私自身が子どもの頃に母親と話していたときの記憶ですが、「○○君の家に遊びにいったらケーキと紅茶が出た!」という子どもの言葉にカチンときた母親は、「それなら〇〇君の家の子になっちゃいなさい」と言ったのです。
それくらいの言葉は、どんな親でも口に出してしまった経験があるかもしれません。
しかし、そんな些細なひと言が子どもの心の傷になることがあります。
私のコーチングのお客様との対話でも、「あのときに親から言われたひと言がどうしても許せない」といった話題が出ることがよくあります。
そのたびに、あらためて、親の言葉というものがいかに子どもの印象に残るのかということを再認識しています。
否定しない専門家/コーチ。合同会社ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ。リーダー育成家。一般社団法人国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。
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