医師が伝える!免疫力の新常識(メラトニン)

「普通の免疫」を維持するために ドクターがクリニックで効果を出している74のメソッド

健康/病気

医師・医学博士。ナチュラルアートクリニック(四ツ谷)院長。統合医療ドクター。麻酔科指導医、麻酔科専門医、救急専門医、抗加齢医学専門医。
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Melatonin[メラトニン]

●メラトニンは睡眠だけでなく免疫機能にも大きな働きがある

●朝日を浴びて、夜しっかり寝るのがメラトニン産生には理想的

●日没から寝るまでの過ごし方に気をつける。特に寝る前のPCやスマートフォンは見ないほうが良い

メラトニンは自然免疫と細胞性免疫の両方に働きかける

メラトニンは、睡眠ホルモンとして有名な神経内分泌ホルモンです。

睡眠と血圧の調節、体内時計(サーカディアンリズム)の調整に関与しています。

また、睡眠の機能に限らずメラトニンは、強力な抗酸化作用と抗炎症作用、そして免疫調節作用などの多機能分子でもあります。

メラトニンは脳内の松果体において生成されることが知られていますが、松果体での産生量は全体の5%以下。

血中を循環しているメラトニンは松果体だけではなく、末梢細胞内のミトコンドリアの中で作られています。

ミトコンドリアで作られた内因性のメラトニンは、自然免疫と細胞性免疫の両方を活性化します。

さらにメラトニンには、ミトコンドリアの保護作用も確認されています。

ミトコンドリアは自分が作り出したメラトニンによって、自らを守るようになっているのです。

そして、ミトコンドリアが守られることによって、我々の正常な免疫機能や活力を維持できます。

メラトニンの外的投与が免疫を強化

メラトニンは、外的投与によっても免疫が強化されることがわかりました。

特に、ウイルス性呼吸器疾患の改善効果も報告されています。

実際、新型コロナ感染症では患者の死亡率を低下させたり、合併症を予防したりと、補助療法としての効果が確認されています。

また、サイトカインストームを抑制する可能性も考えられています。

具体的にはこのような検証が行われました。

重症のCOVID-19患者158名を無作為に2つのグループに分け、一方にはメラトニン10ミリグラムを投与し、もう一方のグループには投与しませんでした。

結果、メラトニン投与群では非投与群に比べて、感染2週目の敗血症、血栓症の発生頻度が有意に低く、また死亡率も有意に低かったことが示されました。

最近の研究では、細胞を老化させるAGEs*(終末糖化産物)を、メラトニンが分解する能力を持つこともわかってきています。

質の良い睡眠を十分にとることや、外的にメラトニンを摂取することで老化を予防し、免疫を維持することができます。

*AGEs(エージーイー)とは、食事などで過剰に摂取した糖と、体を構成するタンパク質が結びつき、体内に生成される老化物質のひとつで、いわゆる「コゲ」。

AGEsが溜まると全身のタンパク質が劣化、すなわちコラーゲン繊維が脆くなり、弾力性が低下する。シワ、たるみ、くすみの原因となるだけでなく、骨も弱くなる。

糖尿病やアルツハイマー型認知症などを悪化させるともいわれている。

糖分の摂りすぎや高血糖で産生される。

日中産生されたセロトニンが夜メラトニンに変化する

メラトニンは夜間に多く分泌されます。

朝、太陽光線を浴びてから14~16時間後にメラトニンが出るよう設定されているのです。

これは、日中に産生されたセロトニンがメラトニンに変換されることによって産生される仕組みです。

太陽光線を浴びることでセロトニンの産生は亢進します。

夜型の生活スタイルや夜勤のシフト勤務の人は、セロトニンの産生が低下することで、メラトニンの産生が低下します。

また、夜間眠らないことでもメラトニンの産生は低下してしまいます。

メラトニンの産生が低下すると、免疫力の低下も起こす可能性があります。

新型コロナ禍の初期、夜のサービス業の街にクラスターが多く発生しました。

もしかしたら、夜眠らない人たちが多いことと免疫力が関係していたのかもしれません。

ビタミンB群やマグネシウムの摂取、サプリメントも

メラトニンを十分産生させるには、夜の過ごし方も重要です。

太陽光を浴びてから14~16時間後にメラトニンの産生は高まりますので、その時間帯(20~22時ごろから)をいかに過ごすかが大切なのです。

20時以降は部屋の照明を暖色系や間接照明にする、夜間寝る前にはスマートフォンやパソコン、テレビなどのブルーライトを発しているものは見ない、といった工夫が大切です。

ブルーライト(青色波長)というのは白色光の中に含まれる光の波長です。覚醒作用、メラトニン産生抑制作用があります。

朝、太陽を浴びると目が覚めますが、その中にブルーライトの波長が含まれていることも作用しています。

それと同じ青色波長の人工的な光が、デバイス類のモニターから発せられています。

こうしたブルーライトを寝る前に見ると、メラトニンの産生が低下し、細胞は覚醒へと向かってしまいます。

規則正しい生活をすること、朝日を浴びること、ミトコンドリアを健全に保つこと、メラトニン産生に必要な栄養素、たとえばビタミンB群全般やマグネシウムなどをしっかり摂取することが必要です。

また、メラトニンは個人輸入やクリニック処方のサプリメントで摂取することもできます。成人であれば寝る前に0.5~5ミリグラム程度を摂取するのが良いでしょう。

一部のお子さんには薬で処方されるようにもなってきました。

PROFILE

医師・医学博士。ナチュラルアートクリニック(四ツ谷)院長。統合医療ドクター。麻酔科指導医、麻酔科専門医、救急専門医、抗加齢医学専門医。

御川 安仁

1995年岡山大学医学部卒業。あらゆる薬剤やテクニックを用いて、「人間の生理機能を意図的にコントロール」することで「体を守る」医療を習得。災害派遣医療チーム(DMAT)のチームリーダーとして東日本大震災に出動。国立国際医療研究センター救急部臨床研修指導医、川口市立医療センター救命救急センター医長、愛宕病院ER・救急蘇生センター救急部長などを歴任。独自の理論「ハイブリッド栄養医学」を構築。副腎疲労やうつ症状、アレルギーがんなどを治療。2015年開業。メディア出演多数。

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医師・医学博士。ナチュラルアートクリニック(四ツ谷)院長。統合医療ドクター。麻酔科指導医、麻酔科専門医、救急専門医、抗加齢医学専門医。
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