「食べない子専門」のカウンセラーが伝える!「偏食は改善すべきもの?」 

偏食に悩む親子、保育園・小学校教師の悩みを解決しつづけてきた「食べない子専門」のカウンセラーが、偏食改善の方法をイラストや図を使ってわかりやすく伝授。紹介するのは、おうちで、簡単に、すぐできる方法ばかり。この一冊で、子どもの食の悩みが消える!

食事

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事/食べない子専門のカウンセラー/食育研修講師
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そもそも、偏食は改善すべきもの?

偏食の話でよく出てくるのが、

「いつか食べられるようになるから、偏食は放っておいても大丈夫」

「私も小さい頃は好き嫌いがたくさんあったけど、大人になったら食べられるようになった」

という言葉です。

子どもは好き嫌いがあるものだし、多少食べられるものが少なくても問題ないと思っている方もいるかもしれません。

また、最近では思想や宗教の問題で「食べない選択をする」ことも大切な価値観とされています。

しかし、私はそういった意見を踏まえても、「偏食の改善に取り組んだほうがいい」と思っています。

これは決して、「偏食の子はダメ」と言いたいわけではありません。

偏食の改善に取り組むと、やるべきこと・やらなくてもいいことが整理されます。

すると、親御さんもお子さんも、気持ち的にとてもラクになるからです。

偏食改善に取り組み、お子さんの食べられるものが増えればいうことはないでしょう。

栄養面での心配が消えたり、一生懸命食事を作っているのに食べてもらえないというつらさが消えれば、子どもとの時間もより楽しいものに変わるはずです。

ただ、実際に食べられるものが大幅に増えなかったとしても、偏食改善に取り組むことには大きな意味があります。

偏食改善によって子どもが食べない本当の理由がわかり、さらに、将来起こりうる問題の芽をつむこともできるからです。

偏食改善で「イライラする時間」が減る

子どもの偏食に悩む親御さんの相談に乗る中で、当初は「偏食改善に取り組むと、親御さんは疲弊していくのではないか」という懸念もありました。

しかし、実際はその逆で子どもの偏食に向き合い、「子どもが食べない本当の理由」を知った親御さんの表情は晴れやかになり、焦りや悩みが軽減されているように見えたのです。

たとえば、食事中、子どもに食べられないものがあったとしても、食べられない理由がわかっていればイライラせずに、そのことを受け止められますよね。

また、子どもが食べたものを口から吐き出してしまったとしても、その理由がわかれば、むやみに悲しんだり、怒らずに済むのです。

子どもが食べない理由がわかると、これまで怒っていた場面で怒らずに済み、親子関係の悪化を防げます。

また、親御さん自身が「私の料理が下手だから食べてくれないんだ」など、自分を責めてつらい思いをすることもなくなります。

こうして、親に気持ちの余裕ができると、子どもも身構えずに食卓に向えるようになるでしょう。

子どもはとても敏感です。

親の不機嫌・イライラを察知するので、親が「食べない子」にイライラしながら食事をすれば、そのイライラを受け取ります。

こうなると、食の進みは当然遅くなりますし、食事自体が「嫌なもの」になってしまいます。

親御さんの気持ちがラクになり、和やかに食卓を囲めるようになれば、子どももポジティブな気持ちで食事に向き合えます。

このことが結果的に偏食の改善につながっていきますし、これからご説明する避けたい事態を回避することにもなります。

子どもを「食事のトラウマ」から守るために大事なこと

避けたい事態というのは、「誰かと食事をするのが怖い」という会食恐怖症になることや、給食へ嫌悪感を抱くことです。

会食恐怖症とは、人前で食事をすることに耐えがたい恐怖や不安を感じる心の疾患のこと。

まだ多くの方に知られていない疾患ではありますが、私はこれまで延べ5000人以上の当事者の相談を受けてきました。

会食恐怖症を引き起こす大きな原因に、家庭や学校でのいきすぎた「完食指導(残してはいけないという指導)」があります。

「食べないことを先生に怒られる」

「食べられない食材を強制的に口に入れられる」

などの食事へのネガティブな経験がトラウマになり、食事自体に恐怖心が生まれてしまうのです。

偏食の子は、他の子に比べて「食べられない」経験をすることが多いでしょう。

食事にまつわるトラウマ体験から会食恐怖症になる可能性も、他の子よりも多いのです。

また、怖がらせるつもりはありませんが、私のもとには「食べられるものが少なく、給食の時間が苦痛で、子どもが不登校になった」という親御さんからの相談も多く寄せられます。

給食以外にも、親戚との会食時に、周りの大人から「好き嫌いしないでちゃんと食べないと」と言われることに親子共々苦痛を感じたり、子どもが友達との外食時に食べられるものが少なく、それが嫌で友達との外出を避けるようになるという悩みもあります。

ちなみに、私は元々「会食恐怖症」の当事者であり、会食恐怖症を克服した経験があります。

その経験から会食恐怖症に悩んでいる方々のご相談に乗っているのですが、会食恐怖症の前段階に、偏食による食事へのコンプレックス・不安があるというケースを何例も見てきました。

そこから「そもそもどうして子どもが偏食になるのか?どうすれば改善されるのか?」ということに興味を持ち、勉強をして今に至ります。

偏食改善に取り組むこと自体に意味がある

親御さんが偏食に関する知識を持っていれば、子どもを「食事のトラウマ」から守ることができます。

たとえば、親戚の集まりなどで「食べなさい」と子どもが言われたときでも、

「この子はこういう理由・性質で食べられないんです」

「家では少しずつ、対応している最中なんです」

などと適切に子どものことを伝えられます。

これによって周りからの理解を得られますし、子どもの自尊心が傷つくことも避けられます。

親御さん自身の自尊心も守れるでしょう。

また、偏食に対しての知識を得ると、

「これをしたほうがいい」

「これはしなくてもいい」

などの〝力の入れどころ〟がわかるようになります。

すると、子どもをむやみに食事関連の話で責めることもなくなりますし、親御さん自身も「出口の見えないトンネルの中で必死にもがくような状況」から抜け出せます。

だからこそ、たとえすぐに改善できなかったとしても、偏食改善に取り組むこと自体に意味があると思うのです。

偏食改善においてまず大事なのは、「なぜ、食べられないのか?その理由をしっかり見極めること」。

PROFILE

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事。食べない子専門のカウンセラー。食育研修講師。

山口 健太

小食・偏食などの改善法を学び、家庭における偏食改善のための講座を開催。講座の内容が「わかりやすい」と話題になり、次第に保育園・学校向けの食育研修会講師として全国から依頼が届くようになる。これまで延べ1000人以上の相談に乗り、偏食改善に導いてきた。

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