専門家が教える「発達障害とゲーム依存は関連している?」
子どもがスマホやゲームをやり過ぎて、学業成績や健康面が心配、依存症ではないかと心配という親のために、予防や回復のための関わり方をわかりやすく紹介します。
発達/発育
専門家が教える「発達障害とゲーム依存は関連している?」
発達障害とゲーム依存は関連している?
ADHDやASDとゲーム依存との関連性が報告されている
ADHD(注意欠如多動症))との関連について数多く研究されており、ネット・ゲーム依存になりやすいのではないかと考えられています。
私が行っているカウンセリングでも、ADHDの診断を受けている、あるいはグレーゾーンであるケースが、ほかの発達障害や精神疾患に比べて割合が多い状況があります。
今すぐに得られる満足を求めるために衝動的な行動をとりやすいことや、刺激を求める傾向などがゲーム行動とマッチングするのではないかと考えられます。
例えば、勉強などの達成感や満足感が得られるのにある程度時間がかかる活動よりも、快感がその場で得られるゲームのほうが選択されやすくなります。
私たちは、日常生活で即座に得られる報酬と長期的に得られる報酬を予測して行動を選択していますが、長期的に得られる報酬を低く見積もり、今すぐに得られる報酬のほうを求める傾向があります。
これを「遅延による報酬の価値割引」といいます。
この遅延報酬の嫌悪が見られることが、ADHDの特徴の一つとしてあげられています。
また、ゲームにはいろいろな種類がありますが、なかでもFPS・TPSと呼ばれるシューティング系のゲームへのハマりやすさが見られます。
地道にコツコツと進めていくRPGよりも、オンライン上に毎回違うメンバーが集まって銃撃戦を行うことや、目の前の相手を倒すことなどが好まれる要素かもしれません。
ASD(自閉スペクトラム症)についても、ゲーム依存との関係が報告されています。
相談事例としてはADHDと比べて多くありませんが、子どもが一つのゲームに没頭し続けていたり、好きな動画を何度も繰り返し見たりする様子を心配に思い、親などが相談に来られることがあります。
ゲーム依存と関連のある特徴として、興味の範囲が狭く、こだわりが強いことがあげられます。
好きなゲームや動画にハマって、それ以外の活動に興味を示さないために親もどうしたらよいのか困っていることが多いです。
また、社会的なコミュニケーションの難しさから、リアルで同級生と遊ぶよりも、自宅でゲームや動画をして過ごすほうが落ち着くということもあるでしょう。
ゲームの種類としては、ゲーム内で仲間とコミュニケーションをとりながら進めていくゲームよりも、マインクラフトといったサンドボックス(箱庭)と呼ばれるジャンルのゲームなどにハマる子が多いです。
そこでは、ゲーム内でコミュニケーションもとれますが、コミュニケーションをとりながら進めていくというよりは、ブロックを組み合わせて建築物やオブジェなどを制作することが楽しく、また、作ったものをゲーム内の他者や家族から称賛されることで満足感を得るということがあるようです。
子どもがゲームをやりたがったときに、保護者がゲーム依存になるからと過度に制限し、かんしゃくを誘発するなどさらなる問題を生じさせることもあります。
また最近では、ICT教育が推進されてきたことで、発達の特性に応じてICTを利活用した教育支援も充実してきました。
ゲーム依存が危険視されることで、発達障害のある子どもにICTを活用することが躊躇されてしまうことは避けたいところです。
ハマりやすさがあるとしても、子どもの特性に応じて、使い過ぎを防ぐ工夫をすることが重要となります。
ネット・ゲーム依存症専門の予防・回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長。公認心理師、臨床心理士、社会福祉士。
家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。
2019年、株式会社KENZANにてMIRA-i(ミライ)を立ち上げる。
ネット・ゲーム依存の大人から子どもまでの当事者、その家族に対するカウンセリングと、予防啓発のための講演、執筆活動を行う。
「インターネットと健康的に付き合う」ことを目指して心理臨床と研究に励む。
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