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大人気の精神科医が伝える心の声“もう親の言うとおりにならないから”

精神科医としてこれまで3万人以上をみてきた著者が、子育て中のお母さんに伝えたいメッセージとともに、「子育てで大切なこと」をまとめました。

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精神科医さわ
児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師

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大人気の精神科医が伝える心の声“もう親の言うとおりにならないから”

もう親の言うとおりにならないから

反抗期は、親の「べき思考」に気づくチャンス

小学校高学年から中学生くらいになると、子どもが反抗的になってきて、どう接したらいいかわからないと悩んでいる親御さんもいます。

私は、子どもの反抗期はけっして悪いものではないと思っています。

子どもが自分の考えや意見を持つようになり、親に甘えたくないという自立心が芽生えてきたということですから、正常な精神発達の過程であって、それほど否定的にとらえる必要はないのです。

また、見方を変えれば、反抗期というのは親が子どもをコントロールしようと思っても、できなくなる時期と言えるかもしれません。

ですから、子どもが反抗期で親が困っているとしたら、それまで無意識のうちに、親が子どもをコントロールしようとしていたことに気づくチャンスなのです。

反抗期だけでなく、子育て全般においてそうだと思いますが、親が子どもに対してイラっとしたときや、「なぜ、この子はうまくやれないのか」と難しさを感じたときは、親が自分の中に「こうすべき」という理想や模範のようなものがあって、その「べき思考」にとらわれているということでもあるのです。

たとえば子どもが不登校になったとき、親の中に「学校には行かなければいけない」という価値観があると、やはり混乱したり、不安になったり怒りを感じたりすることもあるでしょう。

今はフリースクールなど不登校の子どもたちをサポートする団体も増えています。

勉強する場は学校以外にもあると気づくと、子どもが泣いたり叫んだりしているのを見て、そんな思いをさせてまで学校に行かせなくてもいいと思えるかもしれません。

もちろん、いろいろなことを考慮したうえで、やはり学校に行かせたほうがいいと思うかもしれません。

いずれにしても、学校に行く、行かないという判断を親が下す前に、まず当事者である子どもの気持ちに耳を傾けるべきです。

反抗期は立派な成長の証

子どもが反抗してくるときは、これまで自分が信じてきた価値観を疑ってみることも大切です。

子どもが自分に反抗していたら、思わず子どもを責めたくなるかもしれませんが、もしかしたら自分の言動にも原因があるのかもしれないと考えてみてください。

もしかしたら、お父さんやお母さん自身も、それまで「学校に行かなければいけない」「いい成績を取らなければいけない」と思って必死でがんばってきたのかもしれません。

ただ、それを子どもにも「やるべきだ」「できるはずだ」と押しつけていないでしょうか。

子どもに自分の理想を求めすぎていないでしょうか。

まずは、自分の価値観を見つめ直してみる。

もし自分が子どもに価値観や理想を押しつけていたということに気づけば、その後の言動も少しずつ変わってくるはずです。

そして、思春期の子どもというのは、親や社会への反抗を通して成長していく心の発達段階だということも忘れないでくださいね。

親の敷いたレールの上を生きる子どもは、失敗をしにくい半面、親のコントロールがないと不安になってしまうことがあります。

たとえが適切ではないかもしれませんが、刑務所から社会に出た人が1人で生活できないために、もう一度犯罪を犯して刑務所に戻ってしまうのと、ある意味では似ています。親の過度な規律に縛られた中での生活が長ければ長いほど、その子は1人で生きていく自信がなくなり、自分1人ではなにもできないと思い込んでしまうことがあるのです。

子育ての大きな目的は、子どもが社会の中で自立して生きていけるよう、自分の足で立って、歩いていけるようになることのはずです。

自分の思いどおりにコントロールするよりも、子どもが自分の足で立てるよう見守りましょう。

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反抗期は自立のはじまり

PROFILE

児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。

精神科医さわ

1984年三重県生まれ。
開業医の家庭に生まれ、薬剤師の母親の英才教育のもと、医学部を目指す。
偏差値のピークは小学4年生。
中高時代は南山中学校高校女子部で落ちこぼれ、1浪の末に医学部へ。藤田医科大学医学部を卒業後、精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。
母としては楽しみにしていた子育てだったが、発達特性のある子どもの育児に身も心も追いつめられ離婚し、シングルマザーとして2人の娘を育てる。
勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜こころクリニック」を開業。現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで述べ3万人以上の診察に携わっている。2023年11月医療法人霜月之会理事長となる。

「児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること」

著者名
精神科医さわ
出版社
 日本実業出版社

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