大人気の精神科医が伝える心の声“なんでもかんでも指示しないでほしい”

精神科医としてこれまで3万人以上をみてきた著者が、子育て中のお母さんに伝えたいメッセージとともに、「子育てで大切なこと」をまとめました。

しつけ/育児

児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師
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なんでもかんでも指示しないでほしい

対話のもたらすカ

親が子どもに「こんなふうに育ってほしい」と思っていても、子どもの意志を尊重せずにその思いを押しつけると、子どものやる気を奪ってしまうことがあります。

子どもになにかを伝えたいときは、親が命令や指示をしてコントロールするのではなく、親子で話し合いながら伝えたほうがいいと、私は考えています。

たとえば、子どもになにかをしてほしいなら、ただ「これをしなさい」と言うのではなく、どうして親であるあなたが子どもにそれをしてほしいかを伝えるのです。

そして「お母さんはこう思うけれど、あなたはどう思う?」と、それに対してどう思うか意見を聞いてみてほしいのです。

反対に、なにかをやめさせたいなら「やめなさい」と指示するのではなく、それをしたらどうなるのか、なぜやめたほうがいいと思うかを話して、子どもがどうしたいと思うのか意見を聞いてみてほしいのです。

親が方針を決めるのではなくて、対話をしながら、こちらの思いを伝えるのです。

以前、娘が友だちの悪口を言っていたことがあり、それは人に言ったら絶対にダメだと思う言葉だったので、私は頭ごなしに怒ってしまう衝動にもかられたのですが、ひと呼吸おいて、どういう状況で、どうしてその言葉を言ったのか娘に聞いてみました。

そして、「もしも、あなたがそんなふうにお友だちから言われたら、どう思う?」と。

娘は「そんなこと言われたくないって思う」と答えたので、私は「そうだよね。ママも言われたくないよ。だから、○○ちゃんも言われたくなかったんじゃないかな?」と言いました。

すると、娘も納得してくれたのか、お友だちに謝っていました。

対話は、ただ叱って「やめなさい」と言うよりも時間がかかります。

「そんなことを言うのはやめなさい」とひと言で言ってしまったほうが、ずっと楽かもしれません。

でも、子どもの脳というのは、まだまだ大人に比べて未発達なのです。

性急に結論を押しつけても考えが追いつかず、理解ができないことは精神的にとても負担が大きいので、子どもがその反動で反抗的になってくる原因になることもあります。

「子どもが言うことを聞かなくて、とても反抗的なんです」と思っている親御さんは、ぜひお子さんとの対話を増やしてみてください。

「あなたがそれをされたら、どう感じるか」という感情を子どもに想像してもらうことで、おのずと「では、どうしたらいいか」という答えがわきあがってくるのです。

▾ 児童精神科医のつぶやき ▾

子どもになにかを伝えるときは、なぜ親がそう思うのかという理由を伝えて、対話しましょう
PROFILE

児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。

精神科医さわ

1984年三重県生まれ。
開業医の家庭に生まれ、薬剤師の母親の英才教育のもと、医学部を目指す。
偏差値のピークは小学4年生。
中高時代は南山中学校高校女子部で落ちこぼれ、1浪の末に医学部へ。藤田医科大学医学部を卒業後、精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。
母としては楽しみにしていた子育てだったが、発達特性のある子どもの育児に身も心も追いつめられ離婚し、シングルマザーとして2人の娘を育てる。
勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜こころクリニック」を開業。現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで述べ3万人以上の診察に携わっている。2023年11月医療法人霜月之会理事長となる。

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