「月経教育」をしよう
月経を正しく学ぶと子どもは自立する! 金メダリストなどもサポートしてきた著者が、 誰でも今すぐできる「月経教育」の始め方を伝授。
発達/発育
「月経教育」をしよう
「子ども最優先」で考えれば、何が必要か見えてきます
スポーツをしている子どもの保護者からよく相談されることの1つに、「指導者に月経の不調を素直に伝えてよいのか分からない」というものがあります。
伝えたら試合に出してもらえなくなるのではないかという不安があるのだそうです(同じ理由で子ども自身が隠したがることもあります)。
また、私は保護者や子どもから月経に関する悩みを相談されて、その指導者に練習や食事内容について提言することもあります。
子どもの健康を考え、すぐに私の提言を取り入れてくださり、すばらしい指導をされる指導者がほとんどなのですが、ごく一部には、聞いてもらえないケースもあります(それでも私は言い続けますが)。
提言を理解いただけない指導者の方には共通することがあるように感じます。
それは、子どもの「今」しか見ていないということです。
今、一生懸命トレーニングをすること。今、成績を伸ばすこと。
今、競技に全力で取り組むこと。
もちろん、「今」も大事です。
でも、もしそれで子どもが不健康になってしまったら?
健康をとりもどせなくなってしまったら?
子どもの将来について想像することができれば、こうした指導も少しずつ変わってくるのではないかと思います。
月経教育を通じて、子どもたちの悩みを解消するとともに、よりよい指導とはどんなものか、今一度考えていただければと願っています。
大人みんなで月経教育をしましょう
私は、子どもに関わるすべての大人が、月経教育の当事者だという意識をもつようになってほしいと願い、活動しています。
保護者は家庭、教員は学校、スポーツ指導者は練習時間における子どもの一面しか見えていない可能性があります。
その場面では、健康で、何ら問題を抱えていないように見えることもあります。
しかし、すべての時間において、子どもは月経と付き合っています。
中には、誰にも悩みを相談できず、一人で我慢している子どももいます。
保護者も教員も指導者も、全員が子どもが月経についての悩みをもっているかもしれないという前提で、ケアしていく必要があるのです。
もちろん、自分自身で教えることが難しいという人もいるでしょう。そういう場合は、専門家
や詳しい人に入ってもらって、子どもと一緒に学ぶのも1つの手です。
私が伝えたいのは、大人全員が月経について詳しく教えられるようになる必要があるというわけではなく、全員が、子どもは月経と付き合っていることを認識し、必要なサポートを提供する責任があるということです。
保護者やスポーツ指導者の中には、月経については保健体育の授業で学校や教員が教えるものと考えている人もいます。
しかし、保健体育の学習指導要領や教科書で扱っているのは基礎的な知識のみで、不調の時にどうすればよいかまでは教えてくれません。
月経教育は「誰かが教えてくれる」ものではありません。
他人ではなく、自分が責任をもつ。
保護者も指導者も教員も、子どもに関わるすべての大人にもっていただきたい心構えです。
拓植大学国際学部准教授。筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻修了。博士(スポーツ医学)。
2021年に拓殖大学へ。(公財)日本オリンピック委員会強化スタッフ、(公財)日本スケート連盟スピードスケート科学スタッフ、(公財)全日本柔道連盟科学研究部員等を務め、2008年北京、2012年ロンドン五輪では、スタッフとして現地で活動。
ジュニアからトップまで、これまで数多くの女性アスリートの月経に関するサポート活動をおこなってきた。
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