元自衛隊の心理カウンセラーが贈るポイント「子育て情報うつにならないために」
日々子育てに奮闘している、ワーキングマザーに向けて元自衛隊の心理カウンセラーが、心をラクにするための〈心構え〉と〈対策〉をまとめました。
しつけ/育児
心をラクにする心構えと対策「子育て情報うつにならないために」
「子育て情報」でうつになる?
現代の子育て環境は多くの情報であふれています。
ここでは、子育て情報とのつきあい方について見ていきます。
悩んだときにだれかに相談するのとは別に、インターネットやSNSなどの子育て情報を活用している方も多いでしょう。
SNSやネットの漫画などは「あるある情報」が満載ですから、自信を補強するために、おおいに活用していただきたいところです。
しかし、カウンセラーとしては、少し注意してほしいことがあります。
じつは、さまざまな子育て情報に触れているうちに、いつのまにか、うつっぽくなってしまうお母さんが多いんです。
あるワーママのクライアントさんの例です。
その方は落ち込んでいたときに、あるママタレントの子育てエッセイに感銘を受けて、すっかりファンになりました。
その人のSNSをすべてフォローし、YouTubeをチェックして、それを子どもが寝てから一晩中観るようになったのです。
最初は楽しく観ていたのですが、動画を観るのに、いつのまにか睡眠時間が削られてしまうようになりました。
しかも、なんだか落ち込むことが増えてしまいました。
理由をよく考えてみると、動画にのめり込むうちに、次第に「この人みたいに子育てを楽しめない私」が無意識にクローズアップされてきていたのです。
気分転換のはずだった「推し活」が、明らかに疲労の回復の妨げになっていったんです。
「情報への欲求」→「自信を失う」→「悩みを深める」の悪循環に
現代人のうつが深まるとき、過剰な情報が関係していることが非常に多いのです。
ですから少しでもうつっぽいときには、いったん情報を遮断して、刺激を入れずに休養をとるのがベストです。
けれども実際は、うつっぽくなると、強まった不安の感情が「情報」を求めます。
「私の子育て大丈夫かな」を確かめたくて、遮断するどころか、かえって次から次へと情報を探してしまう。
そして、「こうすればいい」というインパクトのある、刺激の強い情報ほど、人は目を離せなくなっていくんです。
こうして集まった情報は、不安のバイアスとインターネットのバイアスで、かなり偏ったものになりがちです。
「子育てはこうあるべき」という期待値が、現実的な基準からズレていって、次第に「あの人(ほかの人)のようにできない私」を感じ、自信を失いやすくなります。
情報を追い求めることでの疲労と相まって、さらなるうつ状態へと陥っていくのです。
悩みや苦しさを解消しようとして情報を求めていたのに、それによって悩みが深まるという、まさに悪循環になってしまうのです。
もしかしたら、心当たりがあるお母さんも多いのではないでしょうか。
「自己啓発本」「宗教本」はNG?
子育て情報について、「これは受け入れる」「これは受け入れない」と自分で判断できなくなってきたら、要注意です。
取捨選択するどころか、「これをやれないから、今の私の子育てがうまくいかないんだ」などとひとつの情報に強くこだわったり、いろいろな情報に振り回されたりするような感じがしたら、情報はしばらく遮断しましょう。
そして、「自分自身のケア」に移行してください。
子育てのあらゆる問題は、自分自身のケアをしっかりすることで、いつのまにか気にならなくなったり、「なんとかやっていける」という意欲も自然に湧いてくるものです。
もちろん、情報収集は大切です。
問題に突き当たったら、情報を入れて知識を得て、スキルやメソッドも試してみて、自分なりの解決方法を編み出していくとよいでしょう。
でも、それは、「ママ自身が疲れていないこと」が大前提なんです。
ちなみに、私のカウンセリングにいらっしゃる方は、すでに「疲労3段階」、つまり「うつ状態」にある人たちが多いです。
本人は苦しさを早く解消したくて、子育て本以外にも、自己啓発や宗教、スピリチュアルの本やサイトを参考にしたがりますが、私からはその時点では、それ系の情報収集をやめてもらうようにお願いしています。
こうした類いの本は、「○○すれば幸せになれる」と、苦しさ解消の道筋を示してくれるので、救われる面があるのも事実です。
しかし、うつ状態では、自信をなくし、自分を責める方向に受け取ってしまいます。
そうした本が好きな人は、こちらが禁止してもつい読んでしまうとも知ってはいるのですが、「なるべく読まないようにしてくださいね」といつもお話ししています。
NPO法人メンタルレスキュー協会理事長、元陸上自衛隊衛生学校心理教官。
その後、自衛隊の衛生科隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルヘルス、カウンセリング、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。
本邦初の試みである「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして、約300件以上の自殺や事故にかかわる。
2015年8月退職。
現在はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、県や市、企業、大学院などで、メンタルヘルス、カウンセリング、感情のケアプログラム(ストレスコントロール)などについての講演・講義・トレーニングを提供。著書50冊以上。
公式HP: http://www.yayoinokokoro.net/
記事の内容がよかったら「イイね!」ボタンを押してね