注意しても聞かない集団行動ルールやマナーって?
こんなときどうする?特別支援教育をベースにした、日常の「困った!」を小さくするヒント#02
発達/発育
注意しても聞かない集団行動ルールやマナーって?
考えなければいけないのは、子どもたちの「ほんとうの目的」です。
この「ほんとうの目的」を「達成させない」ことで、問題の解決に近づくかもしれません。
たとえば、ド派手な衣装を着て成人式会場の壇上に乗り込み、大声ではしゃぐ若者たちの「ほんとうの目的」は、決して「成人を祝うこと」じゃないですよね。
彼らは「成人式」にかこつけて「目立つこと」や「騒ぐこと」、「注目されること」「お祭り感覚」 を目的にしてたのしみたい人たちです。
成人を祝うことが「ほんとうの目的」なら、家で数人集まるだけでも十分なはずです。
このお悩みの場合、「どうして」入ってはいけないところに入ろうとするのか、「どうして」叱られることがわかっていることをしちゃうのかを考えないといけません。
もし「叱られること(=注目してもらえること、かまってもらえること)」が「ほんとうの目的」だったら、叱れば叱るほど「ほんとうの目的」が達成されてしまいます。
悲しいことに、こっちの手立てがまるっきり逆の効果を生んでしまいます。
困った行動を、何度注意しても聞かない場合、子どもたちの「ほんとうの目的」を探っていき、それを達成させない工夫をこらしていきましょう。
ひとりで列を離れてしまいます。
「協調性がない」「集団行動ができない」という「抽象的な表現」をたくさんの視点や考えから「具体的な課題」に変換していくことが大事です。
たとえば、「運動会の行進で列から離れてしまう」を「協調性がない」「集団行動ができない」と捉えていたとしましょう。
このとき「どうして」列から離れてしまうのか、いろんな角度から考えます。
・どこを見て歩けばいいのかわかってないのかも
・行進の最中にほかのことが気になっているのかも
・歩くスピードをまわりに合わせられないのかも
・いつも体育で歩いているコースとちがうからなのかも
など、その子のふだんの様子を活動の内容と照らし合わせながら、なるべくたくさん検討します。
それができたら、可能性の高そうなものからトライ&エラーです。
ここで大切なのは「抽象的な困りごと」を「具体的な課題」に(仮説としてでも)置き換え、手立てを考えていくことです。
どこを見ていいかわからないことが原因で、目線が定まらずキョロキョロしているうちに列から離れてしまうなら 「列のひとつまえの子を見続けられる(まえの子についていける)ためのサポート」を考えないといけません。
体操服の背中にある赤いラインを見るように伝えるとか、
その課題を抜き出して(まったくちがう場面で)目でものを追う練習だけをしてみるとか。
ここを丁寧に拾おうとせず、「協調性がない」「集団行動ができない」と大人が一刀両断するのは、子どもに対してあまりにも乱暴です。
言葉は便利です。
「空気が読めない」「応用が利かない」そんな抽象的なひとことで、
だれかがうまくできないことを断罪することができます。
でも、大切なのは「どうやったら(少しでも)できるかな」の視点であり、具体的なアイデアや手立てです。
わたしたち大人は、子どもたちのふわふわした困りごとに輪郭をつけていってあげましょう。
蒸気はつかめないけれど、氷はつかんで食べられます。
おいしいかき氷、つくっていけたらいいよね。
「恥ずかしい」という感覚を理解してくれません。
ほんとうの意味で、自分が抱く気持ちや感覚以外は、教えることも理解させることもできません。
きびしいですが、まずはこの現実と真正面から向き合うことからはじめましょう。
発達のつまずきのあるなしは関係ありません。
だってそうじゃないですか。
人がおしゃれだと思って堂々と着ている服を、あなたが 「自分には恥ずかしくて着られないな」と思うことは仕方ないですよね?
だれかにとっての「恥ずかしい」は、だれかにとっての「恥ずかしくない」かもしれません。
では、自分が「恥ずかしくない」からといって、人前で服を脱いだり鼻をほじったりしていいんでしょうか。
いいわけありません。
このケースにおけるいちばんの問題は「恥ずかしい」「恥ずかしくない」を理解する(理解させる)ことではなく、「守るべき社会のルールやマナーがある」ことを理解し実践していくことです。
羞恥心を無視して、自分の欲望にブレーキをかけなければ、だれだって「やりたいこと」はたくさんあるかもしれません。
でも、それはときに「犯罪」であり「だれかの心身を傷つけること」「だれかに大きな迷惑をかけること」になりかねません。
鍛え上げられた、美しく魅力的な肉体をどれだけ見てほしくても、公衆の面前でひけらかしてはダメなんです。
だから、一般的に「恥ずかしい」とされる守るべき社会的なルールやマナーを子どもたちには教えていきましょう。
「恥ずかしくない」と本質的には思っていても。
「恥ずかしい」が理解できなかったとしても。
それでもルールやマナーが守れたら、それで十分かっこいい。
SNSフォロワー数8万人超の特別支援学校教員
やさしくてちょっと笑える特別支援教育のつぶやきが人気を集め、Twitterのフォロワー数は6.9万人(2023年2月現在)。
小学部、中学部、高等部のすべての学部を担任し、幅広い年齢やニーズの子どもたち、保護者と関わる。「視覚支援」「課題の分解」「スモールステップ」「見えないところを考える」など、発達障害やグレーゾーンの子どもたちだけではなく、全人類に有効な特別支援教育にぞっこん。
障害の種類や程度にとらわれず「この子はどんな子?」を大切にし、子どもを恐怖でコントロールする「こわい指導」はしない。
「先生も子どももしんどくならない環境」で子ども、そして関わる大人たちのニーズを満たす働き方を模索中。本書がはじめての著書となる
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