不登校専門家が伝える!――ゴールは子どもを学校に戻すことではない
著者自身の不登校の親としての経験や、高校教師として多くの生徒を支えてきたノウハウをもとに、「なぜ不登校になるのか」「親はどう対応すればいいのか」を、具体的にわかりやすくまとめています。
学校
いま、全国で小中学生の約34万6,000人、実に3%超が不登校という過去最多の時代。
不安と孤独に押し潰されそうな親御さんに、「絶対にひとりじゃない」と伝えたい。
自身も我が子の不登校を経験し、30年以上教育現場で子どもたちと向き合ってきた野々はなこ先生著書の『誰にも頼れない 不登校の子の親のための本――思春期の子どもとあなたを救う!』から一部転載・編集してお届けいたします。
不登校のゴールは子どもを学校に戻すことではない
不登校解決のゴールは、子どもを学校に戻すことではありません。
もちろん、以前のように他の子どもと同じように学校に通えるようになればよいでしょう。
事実、親の多くは学校に戻ってほしいと考えます。
しかし、これは大きな問題です。子どもは不登校になったために精神状態がグラグラに揺れています。
「自分は価値のない人間だ」「生きてる価値がないんじゃないか」と自信をなくした状態です。
もし、このような状態のままで学校に戻ったらどうなるでしょうか。
表面上は不登校は解決したように見えます。一方で、グラグラになった精神状態は戻っていないために、遅かれ早かれまた学校へ行けなくなるでしょう。
二度目の挫折は、一度目よりも大きくなります。
学校に戻そうと目の前の問題に取り組んだ結果、再び挫折すると、復活へのハードルが高くなるのです。
ですから、不登校になったときに目指すべきゴールは「子どもが自分のことをありのままでいい」と認め、もう1度「外の世界に挑戦すること」だと私は考えています。
根本的な解決ができていれば、今後の学校生活や就職したとき、何か失敗したことがあっても、そこで踏みとどまることができます。
親に対する不信感が募る
学校に戻すことをゴールに設定して急いで不登校を解決しようとすると、親に対す不信感も生まれます。
自分の気持ちを無視して学校に行かせたという親の行動は、親の世間体を保つためだと子どもの目には映るからです。
「いい学校、有名大学に行けばこの子は幸せになる」という思いで、子どもを学校に戻そうとする親は多くいらっしゃいます。確かに学力は大切です。
でも子どもに合った学校は、いまの学校ではないことははっきりとしています。
拒絶反応が起こっているのですから。
ここで、私の話をさせてください。
子どもが不登校になったとき、他人から笑われないか、育て方が悪いと思われないかと不安な気持ちになったことがありました。
当時、高校教師だった私は、世間から見れば教育のプロです。
それなのに、不登校の子どもがいるなんて誰にも相談できず、職場では隠している時期もありました。
それがあるときからは「うちの子は、うちの子でいい」と不登校であることを認めることができるようになりました。
きっかけは私の地元・大阪での高校生の自殺のニュースを知ったときです。
それまでの私は息子を学校に行かせようと躍起になっていて、息子の気持ちに寄り添うことができていませんでした。話し合いをするつもりが大喧嘩になって、息子が椅子を投げて蛍光灯を割ることなどもありました。
そんな息子への対応に疲れ果てていたときに、自殺のニュースを目にしたのです。
「もしかしたら息子は自ら命を絶つかもしれない」
このままだと私はどんどん息子を追い詰めていくばかりだと気付いた瞬間でした。
息子が死を選ぶのではないかという危機感が私を変えました。
「命さえあればいい。息子が生きていてくれれば中学なんて行かなくてもいい」と学校への執着を手放したのです。
だって、いまのままでは、息子は誰にも相談できずに孤独に死を選ぶことだってあるかもしれません。
息子が自死を考えたときに相談される親になりたい、なるべきだと思ったのです。
それからは学校へ戻すことよりも、信頼できる親子関係を取り戻し、子どもが自信を取り戻すように勇気づけることをしていきました。
現在、子どもは大学を卒業して社会人になり、いきいきと過ごしています。
子どもを学校に戻すということよりも、信頼関係を築くことから始めることが何よりも大切なのです。
子どもによって回復にかかる時間は異なる
不登校のゴールと併せて本章の最初にお伝えしたい大切なことがあります。
それは不登校の子どもが回復するペースについてです。
子どもによって不登校から元の生活のように戻るまでの時間は違います。
早ければ1年以内に回復する子もいれば、2、3年以上かかる子もいます。
そのため、我が子が他の子どもと比べるとゆっくり回復して、時間がかかることもあるでしょう。
しかし、子どものペースで自分の心を癒やしつつ、子どもに合った場所が見つかれば、また社会と関わるようになります。
その場所は学校はもちろん、フリースクールやアルバイト先ということもあるでしょう。
その一歩を踏み出すためには、子どものタイミングで子どもに合った場所が見つかるまで待つ必要があります。
子どもの回復に必要な時間は人それぞれです。
他人と比べずにゆったりとしたりとした気持ちで、その日を待ちましょう。
不登校専門家。ウェルビーイング教育コーチ。
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