眼科専門医が教える!「6歳までの過ごし方が 目と脳の一生を決める」
【視力が落ちるだけじゃない「スマホアイ」の怖さ】 今日、どれだけスマホの画面を見ていますか? スマホを使いすぎると、目に悪い。 誰もがそう思っているはずです。でも実は、スマホの本当の怖さは別にあります。
健康/病気
6歳までの過ごし方が目と脳の一生を決める
子どもの発達と視覚の深い関係
ものを見る能力(目で捉えたものを脳で見る能力ともいえます)と、子どもの健全な発達はとても深く関わっています。
いわゆる「スマホ育児」をしている親がよく心配しているのは「視力が落ちるかもしれない」ことなのですが、実は心配なのはそれだけではありません。
人の持つさまざまな能力が一気に伸びる数年間のことを「臨界期」と呼びます。
それぞれの能力を育むために必要な脳のネットワークが構築される時期であり、聴覚や言語などにも臨界期が存在します。
そして、視覚の臨界期とされるのが、生まれてから6歳ごろまでの期間なのです。
遅くとも10代前半までに視覚は発達しますから、それまでの期間、特に6歳までの過ごし方が極めて重要です。
生まれたばかりの赤ちゃんの目が、どんなふうに見えているかご存知でしょうか?
大人と同じ目がたしかについていますが、見ているものの色や大きさ、距離感や立体感がどう映っているのか、考えてみると不思議ですよね。
生後間もない赤ちゃんの視力は、わずか0.01~0.02程度です。
新生児は色の区別もついていません。
明暗の差はわかりますが、両目のピントを合わせたりすることはできません。
模様や輪郭を識別する能力が限られていますし、目の使い方がわからないので、第1章で述べた両眼視がまだできません。
物体を視界のなかで動かすことで注意を引きます。
1週間ほどすると親の顔を認識してじっと見つめたりします。
たまらなく可愛い瞬間です。
さらに生後3ヶ月になるころまでには、動くものを目で追ったり、はっきりした色や模様を認識するようになります。
最初に認識する色は赤で、刺激の強いビビッドな色から順次認識していくといわれています。
4ヶ月にもなると、ものに手を伸ばしたりし始めます。
目のピントを合わせたり、奥行きを捉える能力が備わってくるからです。
視力はまだ01程度ですが、目の使い方を覚えるにしたがって、いろいろなものに興味を示したり、実際に体を動かしたりするのです。
そして生後8ヶ月くらいになると、視覚と手の動きと記憶力が連動し始めます。
ボールや積み木を触りながら、色や形、手触りを記憶していくんですね。
こうして見る能力をぐんぐん伸ばし、視力も6歳になるまでに10に伸び、ほぼ子どもの目は完成します。
人は目から育っていく
赤ちゃんの目の発達からわかるのは、人間がいかに視覚情報から多くの影響を受け、感じ、学び、成長しているかということ。
特に子どもが飛躍的に成長する時期に「何を見ているか」は、決して軽んじてはいけないのです。
何度も述べている通り、目と脳は強く結びついていますから、視覚への刺激は脳への刺激でもあります。
いろんな色や形のおもちゃで遊んだり、絵本を読んでもらったり、外で虫を追いかけたり、ボール遊びをしたり......といった子どもらしい経験によって視覚が刺激され、驚くほどの勢いで発達していくのです。
脳にある視覚野の発達は、視覚刺激や経験によって形成されます。
赤ちゃんが生後しばらくすると、視覚刺激に反応し、視覚野が発達していきます。
この期間に十分な視覚刺激が提供されない場合、視覚野の発達が遅れる可能性があります。
脳は生涯にわたって変化し続ける能力を持っています。
視覚野も同様に、環境の変化や学習に応じて変化し、適応します。
これは神経可塑性と呼ばれ、視覚野の発達に重要な役割を果たします。
そんな時期に子どもがスマホ漬けになっていたら、どうでしょうか。
たしかに、スマホを通して見る映像や画像も刺激の一つです。
ですから決してスマホを見せてはいけないわけではないのですが、だんだんとスマホに頼る時間が増え、子どもがスマホに依存してしまうような事態になると大問題です。
多彩な色や形に触れる機会が減ってしまうだけでなく、近視になったり、内斜視になってしまったり、視野が狭くなってしまったりと、スマホアイになってしまうリスクが高まります。
医学博士。眼科専門医。
1996年京都大学大学院医学研究科、2001年10月、ロンドン大学UCL(University College London)客員研究員。 京都大学大学院在学中に「Science」に、ロンドン留学中に「Nature」に論文掲載。
2008年、京都大学大学院医学研究科准教授。
2019年、大阪府吹田市に江坂まつおか眼科を開業。
2021年、医療法人アメミヲヤ設立。
2022年、「近視の撲滅を目指すDr.まつおか」YouTubeチャンネル開設。
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