10代のうちに知っておきたい心の守り方!「学校の雰囲気についていけない」
この本は、スクールカウンセラーとして 中高生の悩みと向き合ってきた著者が、 「あなたの心を守るための具体的な方法」をまとめた一冊です。 「友だちが急に冷たくなった」 「勉強のやる気が起きない」 「きょうだいと比べられる」… なぜそんなことが起きてしまうのか? どうしたら解決できるのか? 10代のときに抱えやすい 心のモヤモヤの正体を 一つひとつ紐解いていきます。 著者が実際に聞いてきた、 10代の世界がよくわかる 23人のショートストーリーも掲載。 ぜひ、保護者の方も一緒に読んでみてください。
学校
思春期を迎えた子どもの心のサインにどう寄り添うべきか。多感な時期特有の葛藤やプレッシャーを紐解き、家庭や学校でできるサポートの視点を提示。親子で一緒に読みたい心の処方箋です。
栗本 顕著書『10代のうちに知っておきたい心の守り方』から一部転載・編集してお届けいたします。
Episode
最近、ノートを開くのに少し気合いがいるようになった。
黒板の文字は見えているのに、先生の説明が頭をすり抜けていく。
小学校のころは、勉強で困ったことなんてなかった。
テストで100点をとることも何度もあったし、「ミサキさんはしっかり勉強しているから、中学でも安心ですね」って、三者面談でも言われてたのに。
中学に入ってから、授業は速くて、問題は難しくて、気づいたらついていけなくなっていた。
「前回の復習問題、間違えた人は要注意だぞ~」
先生の声を聞き終わる前に、ミサキは大きくバツ印のついた問題をさりげなく手で隠した。
***
こんなはずじゃなかったのに――。
窓際のいちばん後ろの席で、ユウマは腕を組んでいた。
ここは、第一志望の学校じゃない。
「ここでもがんばればいいじゃない。文化祭とか、楽しいらしいよ」
母が言ったように、学校に行き始めたらなんだかんだ楽しめるのかなって思ってたのに……。
受験の結果を聞いた日のショックを、まだ引きずっている。あんなに努力したのに落ちるはずがないって、心のどこかでまだ思っている。
我ながら切り替えが下手すぎるけど、どうしても割り切れない。
部活の話、クラスのノリ、興味のない噂話。
場ちがいなところにいる気がして、どうしても冷めた目で見てしまう。
もともと目指していた学校のレベルを考えたら、正直授業は簡単だ。でも、正解が並んだ答案用紙をみても、なんにも心が動かない。
***
ミサキは思う。
勉強がつらいって言ったら、逃げだと思われるだろうか。
ユウマは思う。
この学校が楽しくないのは、現実を受け入れられない自分のせいなのか。
なぜ|その違和感は「自己理解の深さ」
あなたが今の学校に通うまでには、さまざまな理由やきっかけがあったはずです。たまたま家が学区内だったからかもしれないし、仲のいい友だちやきょうだが通っていたから、その学校に決めたという人もいるかもしれません。
受験をした結果、第一志望ではなかったという人もいるでしょう。
でも、たとえ第一志望の学校だったとしても、学校を決める段階ではその学校のすべてを知ることはできません。
同じクラスになる人も、担任の先生も、成績がよかったからといって自分で選ぶことはできないですよね。どうがんばっても、「運」や「偶然」としかいいようのない要素があるのです。
ですから、授業のスピードが速すぎて理解が追いつかない、先生の教え方が合わない、クラスの居心地が悪いなど、違和感を覚えてしまうのは仕方がないこと。
むしろ、なんの違和感も不満もない状態でいられるほうが奇跡と言っていいと思います。
こういうとき、「努力不足なのでは?」「自分がわがままなのでは?」と考えてしまう人はとても多いです。
でも、ちょっと考えてみてください。
図書室のような静かな環境のほうが集中できるという人もいれば、友だちと一緒に勉強することで力を発揮する人もいます。競争がモチベーションになる人もいれば、一人で黙々とやりたいタイプもいるでしょう。
すべての人に合う環境なんてないのです。
今の環境に違和感があるということは、自分で自分のことがわかっているということ。
それは「わがまま」ではなく「自己理解の深さ」だと私は考えています。
どうする|違和感を記録する
日々の生活で「居心地が悪い」と感じた場面をノートに書き出してみましょう。
あなたの違和感がデータとしてたまっていくと、自分の傾向が見えてきます
すると、次の選択の機会にこのデータを活かすことができるようになります。
〈例〉
➡︎自分は1対1で話すほうが落ち着くタイプかも。友だち付き合いは少人数で楽しもう。
〈例〉
➡︎自分のペースを乱されるのが苦手だ。塾は自分のペースで進められる個別指導系がよさそうだな。
数か月後の自分が、次の選択をするときのヒントを残しておくイメージです。
「自分はこういうときにストレスを感じるんだな」とわかっていると、大人になっても役に立ちます。
高校、バイト先、大学、就職先……と、選択は続いていきます。
違和感を記録しておくことで、自分を苦しめない場所を賢く選べるようになるのです。
どうする|プラスの“引っかかり”に目を向ける
ネガティブな側面にだけ目を向け続けているとつらくなってしまうので、プラスの側面にも目を向けてみましょう。
たとえば、
勉強は難しいけど、国語の授業で先生のひと言が心に残った。
クラスの雰囲気はイマイチだけど、図書室に置いてある本が自分好みだった。
こんなふうに、「いいな」と思った出来事はないでしょうか。
些細なことと思うかもしれませんが、こうした小さな出来事は、ほかの学校に行っていたら出合えなかったことです。
探し方のコツは、「大きな出来事」を探すのではなく、日常の中の“引っかかり”や“気づき”に目を向けることです。
・制服のセンスがいいな
・あの子の言い方は優しいな
・この学校の図書室は居心地がいいな
・有名なあの人も卒業しているんだよな
といった、「プラスの感覚」を探してみてください。
体育祭や修学旅行といった大きなイベントである必要はありません。
「あなたの心が少しだけ動いた瞬間」を探すこと。
この小さな発見を積み重ねることで、「ここにいる意味」が少しずつ自分の中にたまっていきます。
公認心理師、いじめ撲滅委員会代表。いじめ不登校自殺防止コンサルタント会代表。メンタルヘルス総合サポート株式会社代表取締役。
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